一体そこにどんな世界があるの??? 秘かに体験してみたかったホストクラブ・・・。
ただの旅行者で、なんの知識もないのをいいことにと丸め込めんだサリーちゃん(仮名 スウェーデン人で工芸家)を連れて、遂に旅先にて一軒のホストクラブを訪ねたのであります。

「いざ、出陣じゃ!たのも〜」 (わたしの心境)
身分証を提示し、全く問題のない年齢の私たちはお店の奥へと通されました。


「いらっしゃいませーい(上り調子)」 「いらっしゃいませえー(板さん?)」「いらっしゃいませぇぇぇ(応援団?)」


・・・なかなかの迫力のあるご挨拶でした。関西風味?そんなもの?
店内は暗めで黒を基調としたシンプルなデザインです。ライブハウスみたいな雰囲気がしなくもないです。

落ち着いた風貌の従業員の方がやってきて、お店のシステムを紹介してくれました。
そのお店の場合、初回は2時間 \3,000(税込)で、焼酎1本と割りもの(お茶など)が無料でした。2回目以降はサービス料+消費税で30%が料金に加算されるというのだから恐ろしいです。

サリーちゃんは緑茶割り、私は烏龍茶割りを作ってもらい、落ち着いた風貌の従業員に渡されたホストの人達の写真のファイルを見ました。
好みのタイプの男性を聞かれたのですが、即答するのはなかなかムズカシイ!

サリーちゃん 「どの人も同じ人に見えるよ、違いがわからないよ」

私も興奮しているためか、集中力が欠けてしまい写真がなかなか目に入りません。確かにみんな同じようにも見えてしまうし、「そうだ、何かの写真に似てる、
あ、あれは床屋の前に貼ってはるやつだ」・・などと、どうでもいいことがぐるぐると頭に浮かんでしまいました。

特に希望がない旨を伝えると、ほどなく3人のホストの方がやってきて、それぞれが差し出す名刺を受け取りました。

「ニッキです」(仮名)
「ヒガシです」(仮名)
「マイネーム イズ カッちゃん!ナイス トゥーミーチュウ!」(仮名) ・・・・お、カッちゃん、頑張り屋!? 期待していいの?

3人は横の椅子に座りました。


ヒガシ 「こんにちは〜。ようこそ〜。まずお名前を聞いてもいいですか? サリーさんとマリコさんですね」(コースターに名前をサッとメモっているのが見えました。)

ニッキ 「サリーさんはどこから来たんですか?」

わたし 「サリーはスウェーデンから来たんですよ。今、2人で国内を旅行しています」

ヒガシ 「サリーさんはホストクラブとかに興味があったんですか?」

わたし 「いいえ、わたしが行ってみたかったので、強引に誘ってしまいました。あはは」

ニッキ 「旅行はどういう所をまわってるんですか?」

わたし 「えーと、熱海と静岡と・・・」


気付けば、サリーちゃんを完全に取り残しております。
話題は終始サリーちゃんのことなのですが、会話が全て日本語のためにサリーちゃんが入ってこられません。
おい、植草!(カッちゃん)何とかしてくれよ!この空気!始めの勢いはどうしたよ!!!
固まったサリーちゃんから負のオーラを感じ、これではいかんと細かい会話も全てサリーちゃんに訳すようにしました。



ヒガシ 「2人の会話はスウェーデン語ですか?」(おっ、都合のいい間の手!)

わたし 「そうです、でもサリーは英語が堪能なので、簡単でいいので何かサリーに質問とかしてもらえると喜ぶと思います。」

ヒガシ 「俺、ほんと英語駄目なんスよ、う−ん、・・・ Do you like Japan? 」(う〜ん、よく頑張った・・・のか?)

サリーちゃん 「イエースイエース、ナイスピープル、ビューティフルプレース、ファンタスティックサクラ〜(こんな感じの英語)」

ヒガシ 「へーっ。 (わたしの方を向いて)今、なんて?」(分かってなかったんかい!!)

わたし 「日本が好きだそうです。サクラが綺麗だと言っています。」

ヒガシ 「そうそう、今は大阪城のサクラと祇園がすごく綺麗だよ〜。うんたらかんたら・・・」



季節柄、サクラの話題が沢山出ました。サリーも桜を見ることが旅の最大の目的だったので表情がグッと明るくなりました。

ほどなく話題を引っ張っていたヒガシがテーブルを去り、ニッキと、今や存在が風のカッちゃんしかいないテーブルに、別の人が登場しました。


「ぼくレ◯ジっていいます。電子レンジのレ◯ジです。あなたのハートを溶かすよって(サリーに)言うて下さい」


おそらく100回は言っているであろう掴みのセリフ・・・、異文化交流の難しさか、隣のサリーちゃんはあさっての方向を向いています。(私の訳のせい?)
彼の登場に一瞬唖然としましたが、第一印象におけるインパクトの強さはなかなかのものだと思います。
そして彼は「どうすればそうなるの!?」と言わしめるような、盛りに盛った往年のホストヘアをしていました。
その風貌はサリーちゃんの記憶にも深く刻まれたようで、手を顔の前に斜めにかざしたポーズ付きで「あの前髪が斜めの人」という愛称で、
後日、何度か2人の会話に出てきました。



次々と新しい人が現れては去り、入れ替わり立ち替わりの慌ただしい様相を呈してきました。


なんとなく、昔行ったお見合いパーティを思い出しました。
ファースト インプレッションタイム(!?)で、参加した全ての男性と話すために、1分ずつ会話をしてすぐ次の人にチェンジ。

男「お住まいは○○なんですね(互いのプロフィールの紙を見ながら)、あそこにあるラーメン屋、すごくおいしいんですよね、学生時代によく行きました。
つけめんが特においしいんですよね」 

女「あ、そうなんですか?」 チェーンジ


女「趣味は映画鑑賞ですか。最近どんな映画をみましたか?」

男「アメリを見ました。あれ、結構深いですよね、なんだか泣けました」(どこに泣く要素があんだよ!) チェーンジ



・・・内容がズレてしまいましたが、そんなことを思い起こされるような、なかなかの慌ただしさです。

その内、何人かは英語で会話を頑張ろうとしてくれましたが、その内容は大体この3つです。

「Do you like Japan?」
「Do you like Japanese food?」
「Do you like Sushi?」

ひとり、今時の女性アイドルのような顔つきの可愛らしい男の子がサリーちゃんに積極的に英語を話してくれました。
年齢を聞けば彼は18歳!!つい最近まで学校の授業で英語を勉強していたのだろうから、記憶に新しいのかもしれません。
彼曰く、学生時代は全く勉強をしていなかったそうですが、それよりも高校を卒業してなぜすぐにホストに・・・?と聞きたかったです!

しかしこの頃には、色々なことを質問する気力がなくなってきていました。ひたすら通訳仕事で口の中がカラッカラ・・・。
しかも私は単純に「通訳」というポジションに成り下がってしまったのか、誰も私と言う個の存在に気付いていないようです。
「誰か私への興味をもって〜!あたしはここにいるんだよ〜〜!!誰か見つけておくれよ〜〜!!!(虚しい心の叫び)」




タイで1年暮らしていたという救世主が登場しました。会話はボディランゲージがメインで、片言の英語とタイ語を使って生活をしていたそうです。

「じゃあ英語で会話しましょうよ〜!」と言うサリーちゃんに、「もうすっかり忘れてしまって・・・」と言って、彼は頑に英語を話してくれませんでした。
それでもサリーちゃんは、タイでの生活について興味があるようで、まずは私に色々とスウェーデン後で質問をしてくるのですが、
その内容が複雑になると今度は私がサリーちゃんの言うスウェーデン語が分からなくなってきました。

何だかサリーちゃんに悪いことをしてしまったような気になってきました。


相変わらず人の出入りが頻繁で、結構な数の名刺が手元に貯まったのですが、誰が誰だかまったく記憶に残っていません。(前髪が斜め人だけは覚えています!)

ひとりの人が去り際に


「そんじゃ、今日は最後まで楽しんで行ってね、バイバイ」と言って颯爽に去って行きました。

その姿がどことなくライブ中のミュージシャンのMCを気取ってるように思えて、どうでもいいことなのに「カッカッカ」という乾いた笑いをしてしまいました。
何だか相当疲れてしまったようです。(この一文どうでもいい?)



すると、サリーちゃんが突然



「カタゾメ、オリ、キモノ、カンナ、モッコウ、オビ」と唐突に言い出しました。 (しかもなんか得意気)




つづく



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