( 第3回 最終回 )
念願のホストクラブ潜入を果たした私とサリーちゃん。サリーちゃんはスウェーデンから来たただの観光客で工芸家の友人です。
ホストクラブに全く興味はないため単なる私の道連れになっています(オホホホ)
疑似恋愛をふっかけられたらどうする?ぼったくられる??
風船のように膨らんだ妄想は爆発寸前です!


しかし店内に入って一時間もすると、高揚感はもはや疲労感に変わっていました。
ひたすら必死です!通訳仕事に必死なんです! 
予想以上にサリーちゃんとホストの人達との言葉の壁は厚く、我らの席は少々殺伐としていました。


「う〜ん、うちは英語話せる者は1人もいないんですよ〜。でも身振り手振りで絶対楽しませる自信はあるんで〜。」( ←第一話参照 )


あの発言撤回せよ〜!! 身振り手振りも控えめすぎるぞー!!


ギクシャクとした雰囲気、新しいホストが席に着くたびに質問される内容は

「Do you like Sushi?」

そして私が付け加えるどうでもいい補足情報

「サリーは、ホタテが大好きなんですよ」 ・・・モウ、カ・エ・リ・タ・イ。



すると突然サリーちゃんが発言


「カタゾメ、オリ、キモノ、カンナ、モッコウ、オビ」


その姿は、かけ算の九九を得意気に母親の前で披露する幼き日の自分の姿にダブりました・・・。
しかしさすが工芸家です。日本語の中でもマニアックな単語のチョイスです。

この発言で一瞬固まってしまいましたが、我に返って「日本で覚えた単語をきっと披露しているんだと思います 」と間の手を入れました。

しかしサリーちゃんは英語で


「私は日本に来て数日でこれだけの日本語を覚えたのに、あなた達は何年も英語を勉強しているのに、何で全然話せないの?」


・・・・・。

気弱な私はハートの弱そうな日本男児をつい同情してしまいました。

サリーちゃんは元来討論好き。悪意があるというよりも単純に思ったことを口に出して意見を聞きたいだけなのかもしれません。
(サリーの脳内分析: 単純に疑問65%, 不満30%, 小馬鹿にした5%・・あ、やはり悪意はあったか ^_^ )

今になって考えれば、客がそのサービスに不満を感じた時に「こうして欲しい」とすぐに口に出しても
高いサービス料金を取るこの手のお店では何の問題もないように思います。

ただその時の私は「疲れ+テンパり度MAX」で、なんとかその場の空気を取り繕わねばという思いでいっぱいでした。


おそらく2回目の来店はないだろうしさ〜、中には頑張って英語を話した人もいるしさー、ここはどうか穏便にさー、
私たちの方が全然年上なんだしさー、英語を話せないのが日本の英語教育の特徴だよ(せ・つ・な・い)


( 以上 マリコ 心の声)   


心の中で小市民バリバリの感情を抱きながら、おそるおそるホストの人達の表情をうかがってみると・・・


普通にニコニコしてる!!!! 言葉を聞き取れてないYoooooo・・・・

グッジョブ 言葉の壁!

それならばと「数日間でいくつも日本の単語を覚えたそうです、みなさんもどうぞ英語で話してみて下さいと言っています。」と
核心を柔らかくオブラートに包んだ訳をしました。
英語を話そうとしなかった人もぽろぽろと英語を口に出し始め、その頃にはメンバーの入れ替えも少なくなってきて、
同じメンバーだからか場は落ち着き、少しずつ和やかな雰囲気になりました。
サリーちゃんの仕事について色々と突っ込んだ質問もされるようになり、
私自身が知らなかったサリーちゃんの話を聞くことも出来て、なかなか興味深い時間になりました。



再び「落ち着いた風貌の従業員」(お店のシステムなどを説明してくれた)が

「一通り従業員の顔見せが終わりましたが、残りの時間を席に呼びたい者はいますか?」

と聞いてきました。

手元に既に13人分もの名刺がありました。が、全く顔と名前が一致しません。
印象が強かったのは

「前髪斜め男」(前回登場)と「18歳の女性アイドル顔クン」(英語を頑張って話してた)の2人のみです。

サリーちゃんは私に選択を委ねてきました。それではと、18歳クンをサリーちゃんにつけてもらうことにしました。
(2人は親子のような年の差ですけど・・・。)
私は「前髪斜め男」・・・も頭をよぎったのですが、饒舌そうな彼の話が面倒くさそうな気がして、
最初に場の雰囲気を盛り上げようと奮闘してくれた「ヒガシ」(第2話参照)にしようと思いましたが、ヒガシの本当の名前が分かりません。
いちばん最初にテーブルに来たのだから、一番下の名刺の人だろうと確信して、その人を呼んでもらうことにしました。


少しして18歳クンと「ヒガシ」ではない誰かが「ご指名ありがとうございました」とやって来ました・・・ん?あれ??

ヒガシではありません。その人との会話の記憶がありません。顔は何となく覚えています。
・・・そうだ「ニッキ」です(第2話参照) もうどうでも良くなりました。


サリーちゃん親子はなかなかほのぼのとしたムードです。
息子(18歳クン)がコースターの裏に何かを書きながら、身振り手振りでサリーちゃんに説明をしています。
途中でバンザイのポーズをして見せながら私に、「あの、グリコの看板って英語で何て言うんですか?」と聞いてきました。
彼は大阪の美味しいたこ焼き屋をサリーちゃんに地図を書いて説明していて、目安になる建物としてグリコの看板を教えたいようでした。



私がニッキと何を話したかは正直あまり覚えていません・・・。途中で「前髪斜め男」が席に登場し会話に加わって来て、
H&M(スウェーデンの洋服のメーカー)が最近大阪にオープンしたという話をしました。 そこで私は
「埼玉にも最近オープンしましたよ」と、彩の国観光大使のようにどうでもいいPRをしたことは記憶にあります。


そして2時間が過ぎ、会計を済ませお店を出ることになりました。

別れ際、息子(18歳クン)が

「スウェーデン語で“どうぞお元気で”って何て言うんですか?サリーさんにスウェーデン語で言いたいんですけど」

と聞いてきました。(萠〜)
息子の言葉にサリーちゃんも嬉しかったようで、笑顔で「あなたもお元気で」と答えていました。


結果、特に怖い思いをすることも、妄想をしていたようなこともなく終わりました。
ちょっと疲れたけどなかなか不思議な世界でした。 興味のある方は一度行ってみてはいかがでしょうか?




追伸・・・・

別れ際にニッキが

「時間があった時でいいので、良かったら今日の感想をメール頂けると嬉しいです」と言ってきました!

ここでメールをしてしまえばきっとこの後に営業メールが来てしまうことでしょう・・・。
メールをするわけないだろが!!

・・・と言うのはウソで、どうせ旅行者に大した営業をかけてくることもないだろうと、御礼のメールを張り切ってしました。
すると数時間後に返信メールが

「本日は楽しんで頂けたようで僕等スタッフもとても嬉しく思います。ありがとうございます。」

と丁寧な文章がツラツラと並びます。

そして色々な意味で鼻息が荒くなった最後の一文


「堅い言葉では距離感があるので友達感覚でメール下さいね(笑)ほんじゃ、明日も楽しい旅行にしてね♪

明日もメール待ってるね♪」


わははははは、明日もメール待ってるね・・・って何でだよ!?これこそイメージしていたホストクラブっぽい唯一の物でした。
結局その後、ニッキからはコピペの営業メールが何度か来て、返信を躊躇していたらこなくなりました。

ニッキ・・・よっぽど裕福だったらもう一回ぐらい行ってもいいと思ったのに。
ま、裕福なことなんてこの先ずっとないだろうけどね。アハアハハハ・・・。(寂しい)



( ↑ これが記念写真ダ。筆者の顔だけが2倍デカイ!)




(完)